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2023年5月に行われた「財政制度分科会」の内容を確認しておきましょう
2023年05月31日

財務省としての意見を発信する「財政制度分科会」が開催

年度が変わり、統一地方選が落ち着いた後の2023年5月。そんな折、財政的観点から「社会保障関連分野においても聖域をつくらず、抜本的改革に着手すべき」と声高に主張する“財政制度分科会”が5月11日に開催されました。

“国の金庫番”とも呼べる財務省が介護業界に対し、どのような改革案を突き付けているのか?今回は同省が作成した資料「財政各論」の中で特に介護事業者に関連するであろう論点の中から抜粋し、特に注視・認識しておいた方が良いと思われる6点の内容を採り上げ、お届けしてまいります。




財政制度分科会で採り上げられた「論点」「改革の方向性(案)」とは

では、早速、中身に移ってまいりましょう。
ここでは本分科会で示された資料から抜粋・紹介する形で進めてまいります。
先ずは、財務省の基本姿勢を示している、「介護の改革の必要性」という資料についてです(認識しておいた方が宜しい箇所を太字で強調しておりますのでご確認下さい)。

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○ 介護はすでに医療以上のスピードで費用が増加しているが、団塊世代が85歳以上となる「10年後」には介護費用が激増することが確実。一方で、介護費用を支える保険料・公費負担の上昇、介護サービスを支える人材確保には限界がある。
○ この中で、(1)ICT機器の活用による人員配置の効率化、(2)協働化・大規模化による多様な人員配置、(3)給付の効率化(介護報酬改定、利用者負担、給付範囲の見直し)を3年に1度の制度見直しにおいて、毎回、着実に進める必要。

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※上記に関連した下記図もご確認ください

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続いて、「介護事業の収益の推移」についてです。

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○ 介護事業者は、直近のコロナ禍で、業態間の多少の異同はあるものの、安定した収益をあげている。
○ 産業界全体、とりわけ中小企業や中小サービス業がコロナ前から年ごとに収益が変動する一方、介護事業の収益は安定した伸びを示している。

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※上記に関連した下記図もご確認ください

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更にもう一つ、「介護事業者の現預金・積立金等の水準」についてです。

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○ 主に介護事業を運営する社会福祉法人においては、平均して費用の6か月分前後の現預金・積立金等を保有しており、直近まで毎年、現預金・積立金等の額も増加している。
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※上記に関連した下記図もご確認ください

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これらの資料は、基礎報酬削減の方向性が「妥当」と判断する根拠・裏付けとして示されたものだと理解して差し支えないでしょう。
続いて、「業務の効率化と経営の協働化・大規模化」についてです。

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限られた介護人材のリソースを有効に活用し、生産性を上げていくため、経営の協働化・大規模化は重要な取組。
○ 在宅・施設とも、規模が大きいほど収支差率が上昇。
○ この中で、営利法人と社会福祉法人を比較すると、営利法人の方が収支差率が良好。大手民間企業では100か所以上の事業所で通所・訪問介護を運営している例もあり、こうした取組が効率的な運営につながっていると考えられる。

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※上記に関連した下記図もご確認ください

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更に、上記とは別に、社会福祉法人においては名指しの上、下記内容の資料も掲載されていました。

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○ 介護事業者は毎年多数の参入・退出が見られるが、その多くは営利法人の事業者と見られる。一方で、社会福祉法人については、新規設立・合併・解散いずれも少ない状態。
○ こうした中で、社会福祉法人については、1法人1拠点(1施設のみ)、1法人2拠点(施設+通所or訪問が典型)の法人が過半を占めているが、こうした法人の利益率は低調。
○ 一方で、特養では規模が大きくなるほど職員1人当たりの給与が大きくなる傾向にある。
○ こうした多くの社会福祉法人の経営基盤の強化に資する方策として、他法人との連携、具体的には物資の共同購入、人材の相互交流などが考えられる。これらは職員の処遇改善にも資すると考えられる。

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※上記に関連した下記図もご確認ください

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「介護事業者は、基礎報酬削減にも耐え得ることが出来る経営規模を持つことが不可欠」
「特に、セーフティネット機能がより一層強く求められる社会福祉法人については、協働化・大規模化を進めることが急務」
そんなメッセージを明確に示す資料だと思われます。

続いて、「利用者負担や第1号保険料の見直し」についてです。
先ずは「利用者負担」の見直しについて、下記メッセージ及び資料が示されています。

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○ 後期高齢者医療制度における2割負担の導入(所得上位30%)を受けて、介護保険の利用者負担(2割負担)(現行:所得上位20%)の拡大について、ただちに結論を出す必要。
○ さらに、利用者負担を原則2割とすることや、現役世代並み所得(3割)等の判断基準を見直すことについても検討していくべきである。

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※上記に関連した下記図もご確認ください

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続いて、「介護保険の第1号保険料負担の見直し」についてです。

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○ 介護保険第1号保険料は、保険者ごとに介護サービスの利用見込み等を踏まえて基準額を設定した上で、所得段階別の保険料を決定。基本的に、基準額を上回る分の合計額と、基準額を下回る分の合計額を均衡させることとなっている。
○ これに対し、低所得者の保険料負担の軽減を強化するため、2015年度より、公費による更なる負担軽減を実施。
○ 今後、高齢化の進展による第1号被保険者数の増加や、給付費の増加に伴う保険料の上昇が見込まれる中で、低所得者の負担軽減に要する公費の過度な増加を防ぐため、負担能力に応じた負担の考え方に沿って、高所得の被保険者の負担による再分配を強化すべき。

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※上記に関連した下記図もご確認ください

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水道光熱費等の日常生活コストが上昇する中、負担をどこまで強いることが出来るのか?
非常に難しい判断が求められることになるでしょう。

続いては最近、規制改革推進会議等でも問題提起されていた「人材紹介会社の規制強化」についてです。

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○ 人材の採用に当たって、5割の介護事業者が民間の人材紹介会社を活用しているが、年収の30%程度が手数料の相場水準となっているため、結果として、一部の人手が不足している事業者が高額の経費を支払っている状況。また、人材紹介会社を介する場合には採用した人材の離職率が高いとする調査もあり、必ずしも安定的な職員の確保に繋がっているとは言い難い。
○ 介護職員の給与は公費(税金)と保険料を財源としており、本来は職員の処遇改善に充てられるべきもの。介護事業者向けの人材紹介会社については、本人への「就職お祝い金」の禁止など現行の規制の徹底に加え、手数料水準の設定など、一般の人材紹介よりも厳しい対応が必要。そもそも、ハローワークや都道府県等を介した公的人材紹介を強化すべき。

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※上記に関連した下記図もご確認ください

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人材紹介事業者に対し、どこまで、どのような規制が行われるのか。次回の法改正に注目したいところです。

続いて、「サービス付き高齢者向け住宅におけるケアマネジメント等の適正化」についてです。

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○ サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)等においては、同一の建物に居住する高齢者に対して特定の事業者が集中的にサービスを提供している場合に、画一的なケアプランや過剰なサービス等の問題が指摘されてきた。
○ 前回の報酬改定時に、問題事例についてはケアプランを点検する仕組みを導入したが、画一的なケアプランや過剰なサービス等の問題事例が見つかるとともに、ケアプラン点検によりサービスの見直しにつながった例は多くない状況。その背景の一つとして、サ高住の運営者との関係で見直しが進まないとの課題が指摘されている。
○ また、ケアマネジメントについては、利用者にサ高住の入居者がいる場合、それ以外の場合と比較して、所要時間が3割程度少ない。
○ こうした実態を踏まえ、サ高住等でケアマネジメントを提供する事業者には、同一建物減算を適用すべき。さらに、訪問介護等についても、利用者が同一建物に集中している場合には、一層の減算を行うことで適正化を図るべき。

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※上記に関連した下記図もご確認ください

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ケアマネ協会がどのようなコメント・反論を出すかも含め、今後の議論の行方を追いかける必要があろうかと思います。

最後に、「第10期計画期間(2027~2029年度)の開始までに結論を得るべき事項」としてまとめられた資料についてです。

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【要介護1・2への訪問介護・通所介護の地域支援事業への移行等】
○ 要支援者に対する訪問介護・通所介護については、地域の実情に応じた多様な主体による効果的・効率的なサービス提供を行う観点から、地域支援事業へ移行(2018年3月末に移行完了)。今後も介護サービスの需要の大幅な増加が見込まれる中、生活援助型サービスをはじめ、全国一律の基準ではなく、人員配置や運営基準の緩和等を通じて、地域の実情に合わせた多様な人材や資源の活用を図り、必要なサービスを提供するための枠組みを構築する必要。
第10期介護保険事業計画に向けて、要介護1・2への訪問介護・通所介護についても地域支援事業への移行を目指し、段階的にでも、生活援助型サービスをはじめ、地域の実情に合わせた多様な主体による効果的・効率的なサービス提供を可能にすべきである。

【ケアマネジメントの利用者負担の導入】
○ 介護保険サービスの利用にあたっては一定の利用者負担を求めているが、ケアマネジメントについては、介護保険制度の導入にあたり、要介護者等が積極的にサービスを利用できるようにする観点から、利用者負担を取らない例外的取扱いがなされてきた。他方、介護老人福祉施設(特養老人ホーム)等の介護施設においてケアマネジャーが行う施設サービス計画の作成等に係る費用については、基本サービスの一部として利用者負担が存在しているため、施設と在宅の間で公平性が確保されていない。
第10期介護保険事業計画期間から、ケアマネジメントに利用者負担を導入すべきである。

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※上記に関連した下記図もご確認ください

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国策の“風”を読み取り、早め早めの準備を

以上、財政制度分科会内の資料「財政各論」より、介護事業者に直接関係のある部分から論点を幾つか抜粋してお伝えさせていただきました。

本内容は国全体の方針ではなく、あくまで「財務省」という一省庁の意見である、ということはしっかり認識しておく必要はあろうかと思いますが、それでも「財政健全化」が叫ばれる我が国としては、財務省の挙げる声に一定の重みがあることも否めない事実だと思われます。事業者としては上記内容を踏まえつつ、「もしこれらの施策が実行された場合にどう対応するか?」について事前に頭を働かせておくことが重要だと言えるでしょう。

私たちも今後、引き続き、本テーマを含め、より有益な情報や事例を入手出来次第、皆様に向けて発信してまいります。

※上記内容の参照先URLはこちら

https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings/material/zaiseia20230511/02.pdf

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