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10月開催「介護給付費分科会」のポイントを確認しておきましょう
2023年10月30日

2024年度法改正・報酬改定に向け、いよいよ第2ラウンドが開始

2024年度介護保険法改正・報酬改定の議論が現在進行形で行われている“介護給付費分科会”。9月21日・27日、10月2日と関係団体からの要望確認・ヒアリングを終え、10月23日以降、いよいよ各サービスの具体的な改正内容が見え始めてくる時期に入ってまいりました。

皆様各々によって興味・関心をお持ちのサービスが異なると思われるため、各サービスの現段階における議論内容は是非、介護給付費分科会のページをあらためてご確認いただきたく思いますが(本ニュースレターの最後部にリンクURLの記載在り)、今回は、それらの中でも10月23日開催の分科会にて採り上げられた「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」「夜間対応型訪問介護」「小規模多機能型居宅介護(以降、小多機)」「看護小規模多機能型居宅介護(以降、看多機)」「認知症対応型共同生活介護(以降、GH)」の5つのサービスの中から3つ、小多機、看多機、GHに絞り、情報を抜粋してお届けしてまいります。





各サービスの「論点」及び「対応案」注目すべき内容とは

では、早速、中身を確認してまいりましょう。先ずは小多機の論点1「認知症対応力の強化」及びそれらに対する対応案についてです(重要と思われる部分については太字としています。以下、同じ)。

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論点1
■ 平成21年度介護報酬改定において、小規模多機能型居宅介護の利用者ニーズに対応するため、認知症高齢者等への対応に対する評価として、認知症加算を創設したところ。
認知症加算の算定率(※)は事業所ベースで、(I)92.3%(39.5%:利用者ベース)、(II)70.5%(9.3%:利用者ベース)と多くの事業所が算定を行っている。
※介護給付費等実態統計(令和4年4月審査分)(利用者ベースについては、老健局認知症施策・地域介護推進課にて算出)
■ また、小規模多機能型居宅介護は、中重度の要介護状態となっても住み慣れた地域で暮らし続けることができるよう、24 時間 365日の在宅生活を支援するサービスとして、その機能・役割を果たしてきたところであり、近年サービス利用者のうち認知症高齢者の割合は増加傾向にある。
■ 他方、認知症の重度化や家族介護の負担増加により、サービス利用を終了する利用者も一定数いる状況。
■ こうした状況を踏まえ、小規模多機能型居宅介護における認知症対応力を更に強化していくために、どのような対応が考えられるか。

対応案
■ 小規模多機能型居宅介護の利用者における認知症高齢者の割合が増加傾向にある中で、認知症が重度化した際には、施設・居住系サービスへ移行している状況であることを踏まえ、サービスに期待される機能・役割を強化していく必要がある。
■ このため、認知症対応力の更なる強化を図る観点から、現行の認知症加算の取組に加えて、認知症ケアに関する専門的研修修了者の配置や認知症ケアの指導、研修の実施等を行っていることについて新たに評価することとしてはどうか。※看護小規模多機能型居宅介護も同様にしてはどうか。
■ また、新設する区分の取組を促す観点から、現行の単位数は見直してはどうか。

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あくまで仮説の域を出ない話ではありますが、上記内容を勝手拡大解釈をするなら、「現行の認知症加算(1)は基礎報酬に包括してしまい(=もう十分浸透した、という意味で)」、「既存の(2)を(1)として位置づけ」、「今回の新たな評価に基づく加算を(2)として新設する」などという方向も生まれてくるかもしれません(かつてのデイサービスの機能訓練加算で行われたように)。小多機経営者にとっては要注目の情報かもしれない、と感じる次第です。

続いて論点2「地域包括ケアの推進と地域共生社会の実現に資する取組」及びそれらに対する対応案についてです。

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論点2
■ 高齢者が住み慣れた地域で在宅生活を継続するためには、限られた地域資源の中で、介護保険制度内で提供されるサービスと併せて、多様な主体の参画を得つつ、高齢者本人とともに生きがいや地域をともに創りあげていく体制を整備する必要がある。
■ 小規模多機能型居宅介護では、利用者が地域住民との交流や地域活動への参加を図りつつ、利用者の状況や環境の変化に応じて「通い・訪問・泊まり」を柔軟に組み合わせて提供するため、1.介護職員や看護職員等が日常的に行う調整や情報共有、2.多様な関係機関や地域住民との調整や交流等の取組を総合マネジメント体制強化加算として評価しているが、当該加算の算定率は事業所ベースで約9割であり、多くの事業所が、利用者の地域における様々な活動が確保されるように、地域の多様な主体と適切に連携するための体制構築に取り組んでいる状況である。
■ こうした状況を踏まえ、小規模多機能型居宅介護事業所が、地域包括ケアシステムの担い手として、地域に開かれた拠点となり、多様なサービスを包括的に提供し、認知症 対応を含む様々な機能の発揮を促進する観点などから、どのような対応が考えられるか。

対応案
■ 現行の総合マネジメント体制強化加算については、加算の算定率等を踏まえ、更なる地域包括ケアの推進を図る観点から、基本サービス費として包括的に評価することとしてはどうか。
■ また、小規模多機能型居宅介護が、地域包括ケアの担い手として、地域に開かれた拠点となり、サービスの質の向上を図りつつ、認知症対応を含む様々な機能を発揮し、地域の多様な主体とともに利用者を支える仕組みづくりを促進する観点から、地域包括ケアの推進と地域共生 社会の実現に資する取組について、新たに評価することとしてはどうか。
■ 具体的には、利用者と関わりのある地域資源の状況を把握した上で、多様な主体が提供する生活支援サービスを含む居宅サービス計画を作成すること、認知症の方の積極的な受入や人材育成、更には、地域の多様な主体と協働した交流の場の拠点づくりの取組などを評価してはどうか。

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総合マネジメント体制強化加算の取得率は、「小多機で90.1%」「看多機で91%」「定期巡回で90.4%」。もう十分に浸透したであろう、ということで、更に一段踏み込む形の取組を後押しする方向に動くことはほぼ間違いないように思われます(小多機、看多機、定期巡回3サービス全て同じ方向で動くことになるでしょう)。
一方、総合マネジメント体制強化加算の基本報酬包括化については

(1)逆に1割弱の事業所は取り組んでいない訳で、その点のメリハリをどのように位置づけるのか
(2)既存の同加算は区分支給限度基準額の枠外になっており、この辺りをどう設計するのか

という2点も気になるところです。上記2点の観点含め、今後の動きをしっかりと注視しておく必要があるものと思われます。

続いては2つ目のサービス、看多機についてです。看多機については一つの論点のみ抜粋させていただきます。「柔軟なサービス提供のための報酬体系」及びそれらに対する対応案についてです。

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論点1
■ 看護小規模多機能型居宅介護は、サービスによって介護度別の利用頻度が異なり、例えば、「泊まり」、「通い」は介護度が高くなるほど多くなるが、「訪問」は要介護3が最も多い。
登録定員には一定数の空きがあるが、「利用料が高い」、「通い、泊まり、訪問看護、訪問の全ては必要ない」等の理由から、新規利用に至っていない。
■ 多くの事業所は職員の確保に困難を感じており、計画にない泊まり、看取り期になってからの利用ニーズ等への対応に課題を抱えている。
■ このような状況を踏まえ、利用者が状況に合わせてサービスを利用しやすくなるとともに、計画にないサービス提供にも安定して対応する体制を構築するには、どのような方策が考えられるか。

対応案
■ サービス利用頻度が少ない場合は、サービス提供量、利用者の納得感等の観点から、当該利用者の利用状況に合わせた報酬の調整を行ってはどうか。
■ 「泊まり」サービス提供の予定がない場合でも受け入れることもあることから、計画にない「泊まり」サービスを必要に応じて行うことについて評価してはどうか。

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上記対応案をそのまま解釈すると、「利用状況によって、基礎報酬からの減額対応を検討する」ということになるかもしれません。基準をどこに持っていくのか?どれだけの減額を行うのか?今後の情報を注視する必要があろうかと思います。
(総合マネジメント体制強化加算については看多機も小多機と同様の方向性で検討が進められているため、割愛させていただきます)。

続いて最後のサービス、GHについてです。GHも看多機同様、一つの論点のみ抜粋させていただきます。「医療ニーズへの対応強化(医療連携体制加算)」及びそれらの対応案についてです。

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論点1
■ 医師や看護職員の配置が必須となっていない認知症対応型共同生活介護については、入居者が可能な限りホームでの生活を継続できるよう、医療ニーズのある者に適切な対応ができる体制を整えている事業所を、医療連携体制加算(I)(II)(III)で評価している。
■ このうち、 加算 (II)・(III) は、看護体制に加えて、医療的ケアが必要な者の受け入れ実績が要件となっており、令和3年度介護報酬改定において、対象となる医療的ケアの範囲の拡大を行った。
■ 加算(I)は多くの事業所が算定しており、看護職員の配置や医療機関等と連携している事業所においては、様々な医療ニーズへの対応がある一方で、医療的ケアに「特に対応していない」事業所も存在しており、事業所で対応できない医療ニーズがある場合は、入院あるいは退居(医療ニーズに対応できる事業所へ転居)となっている状況。
■ また、加算(II)・(III)の算定は低調であり、その理由としては、「看護職員を常勤換算で1名以上確保できない」の他、「算定要件に該当する入居者がいない」などが挙がっている。
■ また、関係団体からは、必ずしも要件に該当する医療ニーズが発生するとは限らないなど、常時要件該当者を確保することは困難であり、積極的に医療提供体制の整備を図る事業所に対しては、その体制整備自体の評価を求める要望があったところ。
■ このような状況を踏まえて、認知症対応型共同生活介護における医療ニーズへの対応を強化していく観点から、どのような対応が考えられるか。

対応案
■ 看護職員の配置や医療機関等と連携している事業所においては、必ずしも医療ニーズへの対応が行われている状況にないことを踏まえ、看護体制の整備や医療的ケアが必要な者の受け入れについて適切に評価する観点から、看護体制要件と医療的ケアが必要な者の受入要件を分けるなど、評価を見直してはどうか。

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上記対応案は非常に現実的かつ合理的であると思う一方、各々の区分がどの程度の加算額になるのか?また、それらが運営上適切なのか?等については気になるところだと感じる次第です。




議論のプロセスから関心を持って情報を追いかけておくことが大切

以上、今回は10月23日の給付費分科会の議論から、3つのサービスをピックアップして確認・言及させていただきました。冒頭部でも申し上げましたが、今回の内容だけでなく、皆様が運営されているサービスや、関心が高いテーマについては是非、早めに目を通されることをおススメします(社会保障審議会(介護給付費分科会)ページの「議題等」の部分をご覧いただければ、いつどんな議題が挙がっているかがお分かりいただけるかと思います)。

また、紙幅の関係上、今回は各資料の中から「論点」及び「対応策」の2点をピックアップさせていただきましたが、「何故この論点・対応案に至っているのか」の根拠となるようなデータも資料の中に含まれている場合が殆どです。是非、そちらにも目を通していただくと、更に議論のプロセスやポイントが理解しやすくなることと思われます。

介護経営者としてはそれら全体に目を通す中、「こうなるかもしれない」という最終的な結論だけでなく、「何故このような改正が行われる可能性が高いのか?」という、文字の裏に潜む意図や背景、メッセージを温度感も含めて理解する姿勢がますます求められることと思います。その意味においても早め早めに情報をキャッチアップし、頭の中で“PDCA”を回しつつ、「もし上記が実行された場合、自社にはどのような影響が出てくるか?」「それら想定される影響に対し、どのような対応を行う事が最適なのか?」等々、幹部育成の視点も含め、そのような議論を社内で始めていかれる事を是非、おススメする次第です。

私たちも今後、有益な情報を入手出来次第、どんどん情報を発信してまいります。


※本記事の引用元資料はこちら

第228回社会保障審議会介護給付費分科会
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_35768.html

※「介護給付費分科会」ここまでの議論の一覧ページはこちら
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-hosho_126698.html


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