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「複合型サービス(訪問介護と通所介護)」のポイントを確認しておきましょう
2023年11月29日

2024年度法改正・報酬改定に向け、第2ラウンドがほぼ終了

2024年度介護保険法改正・報酬改定の議論が現在進行形で行われている“介護給付費分科会”。11月6日・10日・16日・27日、と月内で4回開催され、いよいよ各サービスの具体的な改正内容が見え始めてまいりました。

皆様各々によって興味・関心をお持ちのサービスが異なると思われるため、各サービスの現段階における議論内容は是非、介護給付費分科会のページをあらためてご確認いただきたく思いますが(最後部にリンクURLの記載在り)、今回は、それらの中でも11月6日開催の分科会にて採り上げられ、事業者の注目を集めている「複合型サービス(訪問介護と通所介護の組合せ)」(以下、「新複合型サービス」という)の情報について抜粋してお届けしてまいります。




新複合型サービスに対する各団体からの意見、並びに「論点」及び「対応案」とは

では、早速、中身を確認してまいりましょう。先ずは新複合型サービス創設に対する、関連する4団体からの意見についてです。先ずは、全国ホームヘルパー協議会からの意見です。

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■ 全国ホームヘルパー協議会
 ○ 訪問介護と通所介護を組み合わせた複合型のサービス類型の制度設計にあたっては、現在の各サービスにおける提供状況や質を適切に評価していただきたい。
 ○ 利用者の住み慣れた自宅や地域での生活の継続に向けて、専門性をもって自立支援・重度化防止に取り組んでいる訪問介護事業所と適切に連携できる仕組みを要望する。

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続いて2番目、全国定期巡回随時対応型訪問介護看護協議会からの意見です。

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■ 全国定期巡回随時対応型訪問介護看護協議会
 「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」は、定期訪問サービスや随時対応サービス等を通じて、利用者の在宅生活を24時間365日支えることができる地域密着型の訪問系サービスだが、「通所介護」と組み合わせてサービス提供することで、両サービスの特性が活かされ、利用者を地域でさらに手厚く支えることができる。
 しかしながら、上記サービスを併用するにあたり、支給限度額があるため「通所介護」の利用回数に制限が発生し、結果として「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」の利用が進まないという実態がある。
 そこで、「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」と「通所介護」を組み合わせた「新しい複合型サービス」を設けることで、上記の要因を取り除き、地域包括ケアモデルの確立を推進したいと考えており、検討いただきたい。

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続いて3番目、地域共生ケア全国ネットワークからの意見です。

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■ 地域共生ケア全国ネットワーク
 宅老所や共生型ケアは、個々や家庭支援のため、「通って、泊まって、自宅にもいって、長期で泊まることもできて、ケアマネジメント・ソーシャルワークする」多機能支援を実践してきた。
 今回の新たな複合型サービスついて、私たちの実践の一部分を評価頂いたものだが、通所と訪問がセットになっただけでは、在宅生活や地域生活は支えきれない。中途半端な組み合わせのサービスをつくるよりも、今後の地域のあり様や地域共生社会に対応した、制度横断的(介護保険・障害者総合支援法・保育・生活困窮者支援等)な基準緩和の複合型サービスとすべき。

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最後、4番目は全国介護事業者連盟からの意見です。

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■ 全国介護事業者連盟
 ③ 訪問+通所複合型新サービスにおける包括報酬払い
 新サービス創設においては、既存サービスとの整理を慎重に進め、現場の混乱が生じないよう、老健事業等の調査結果も踏まえた制度設計をお願いしたい。
 なお、新サービスの創設にあたって、制度の安定性・持続性の確保の観点から報酬については財源の見込みが立ち易い包括報酬とすることを要望する。
 また、複合型の包括報酬によるサービスは、今後の介護保険制度の持続性の確保に向けて主流となるべきサービスであると考える。この新サービスは、そのための試金石となる大変重要な創設であり、現場の実情を丁寧に把握し、新サービスが地域や必要な利用者に求められ、事業運営の持続性がしっかりと確保される制度設計となるようにお願いしたい。

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また、各団体からのヒアリングを行う中、下記の質問が行われ、それらに対して2つの団体から回答を得ています。

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(事業者団体ヒアリングにおける質疑応答)
【質問】
通所と訪問の新たな複合型の提案等について、ヘルパー側の立場から見て、どう考えるか。

【回答】
○ 全国ホームヘルパー協議会
複合型サービスにおいては、例えば同一建物等減算などで発生している不適切なサービスが、今後、新たな課題として発生しないようなことを要望しており、具体的には自立支援重度化防止に資する、利用者本位のサービス提供を行う既存の訪問介護事業所と連携できるサービス体系を要望している。
○ 日本ホームヘルパー協会
複合型サービスについては、大賛成である。朝のケアや帰りのケアを通所介護の中で訪問介護ができれば、人員を確保できる。訪問介護は訪問介護で別のところでできるため、良いサービスだと考える。当協会は大賛成ということで、協議している。

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以上の意見や質疑応答を踏まえ、新複合型サービスについては大きく3つの論点及び対応案が示された次第です。

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論点1
■ 介護保険制度の見直しに関する意見(令和4年12月20日社会保障審議会介護保険部会)においては、「複数の在宅サービス(訪問や通所系サービスなど)を組み合わせて提供する複合型サービスの類型などを設けることも検討することが適当である」とされている。
■ 訪問介護は、人材不足が顕著であり、サービス提供を断ったことがある理由の約9割が人手不足という回答となっている。また、訪問介護への就業希望者が少ない理由として、「一人で利用者宅に訪問してケアを提供することに対する不安が大きい」ということが挙げられている状況。
■ 通所介護では、コロナ禍における特例として訪問サービスの提供が行われ、「日常の様子をみている職員が訪問するため利用者の状態の変化にいち早く気づくことができた」ことや「これまで関わりのある職員が訪問するため、利用者または家族の安心感があった」ということが挙げられている。また、訪問サービスの提供を行うこととした理由として、利用者・家族からの要望や職員からの提案によるものも挙げられ、代替となるサービスが見つからなかった場合などにも利用者の在宅における生活の維持が図られたという報告もあった。
■ 調査研究事業では、訪問系・通所系サービスを併用する際、急なキャンセル等のサービス変更があった場合の連絡調整が煩雑であるなどの課題が指摘されている。
■ このような状況も踏まえつつ、一体的なサービス提供により効果的かつ効率的なサービスとなるよう、複合型サービスの組合せとその機能・役割についてどのように考えるか。



対応案
■ 複合型サービスについては、「訪問介護」と「通所介護」を組み合わせた地域密着型サービスとしてはどうか。
■ サービスの役割・機能については、 「訪問介護」と「通所介護」を 一体的にサービス提供を行うことにより、「訪問」と「通所」における利用者の態様を把握した上で、随時共有し、利用者の状況やニーズに即応したきめ細かなサービスの提供を行うことで、機能訓練等を通じた生活機能の維持・向上を図り、要介護者の自立した在宅生活が継続できるよう、効果的かつ効率的なサービスを行うことを目的としてはどうか。

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論点2
■ 複合型サービス(訪問介護と通所介護の組合せ)の基準については、既存のサービスの組合せであることを踏まえつつ、利用者に対してきめ細かなケアを行うとともに、 効果的かつ効率的なサービスを提供を行う などの観点から、どのように考えるか。



対応案
【共通】
■ 既存のサービスの組合せであることから、サービスの質の確保の観点から、それぞれのサービスで必要とされている人員・設備・運営基準は基本的に同様のものとすることとしてはどうか。
【人員基準】
■ 管理者は、ひとつのサービスとなり、従業者を一元的に管理することから、1名の配置としてはどうか。
■ 訪問・通所サービスに対応が可能な人材の育成を図る観点から、事業所全体で必要な人員を確保することにより、基準を満たしていることとしてはどうか。
■ 訪問介護員等は、限られた専門人材の有効活用を図り、地域の訪問ニーズへの対応を行う観点から、訪問介護事業所の指定を併せて受け、一体的に運営されている場合は、訪問介護員等に関する双方の基準を満たすこととしてはどうか。
【設備基準】
■ 設備は、ひとつのサービスとなることから、すべて共有して使用することとしてはどうか。
■ 地域密着型サービスの趣旨を踏まえ、登録定員を設けることとし、29人以下としてはどうか。
【運営基準】
■ 地域密着型サービスであることから、地域に開かれたサービスとし、サービスの質の確保を図る観点から、運営の公平性や透明性を確保するための運営推進会議(6月に1回以上開催)を設けることとしてははどうか。
居宅介護支援事業所の介護支援専門員が作成したケアプランに基づきサービス提供を行うこととしてはどうか。
■ 個別サービス計画については、利用者の状況等に応じてきめ細かなケアを行う観点から、居宅介護支援事業所の介護支援専門員との連携のもと、個別サービス計画において利用日時等について決定することとしてはどうか。

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論点3
■ 複合型サービス(訪問介護と通所介護の組合せ)の報酬については、既存のサービスの組合せであることを踏まえつつ、利用者に対してきめ細かなケアを行うなどの観点から、どのように考えるか。



対応案
【基本報酬】
■ 基本報酬については、利用者の状態の変化等に応じて、時間区分にとらわれない訪問・通所のきめ細かなサービス提供を行う観点から、利用者の自己負担額の変動を回避し、円滑なサービス提供を行いやすくするため、包括払い(要介護度別)としてはどうか。
【加算・減算】
■ 加算・減算については、既存サービスの組合せであることから、現行の訪問介護と通所介護の加算・減算を基本としつつ、包括報酬であることや複合型サービスの特性を踏まえたものとしてはどうか。

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議論のプロセスから関心を持って情報を追いかけておくことが大切

以上、今回は11月6日の給付費分科会の議論から、新複合型サービスをピックアップして確認させていただきました。冒頭部でも申し上げましたが、今回の内容だけでなく、皆様が運営されているサービスや、関心が高いテーマについては是非、早めに目を通されることをおススメします(社会保障審議会(介護給付費分科会)ページの「議題等」の部分をご覧いただければ、いつどんな議題が挙がっているかがお分かりいただけるかと思います)。

また、今回は分科会資料の中から幾つかのトピックスをピックアップさせていただきましたが、「何故このような論点・対応案に至っているのか」の根拠となるようなデータも資料の中に含まれている場合が殆どです。是非、そちらにも目を通していただくと、更に議論のプロセスやポイントが理解しやすくなることと思われます。

介護経営者としてはそれら全体に目を通す中、「こうなるかもしれない」という最終的な結論だけでなく、「何故このような改正が行われる可能性が高いのか?」という、文字の裏に潜む意図や背景、メッセージを温度感も含めて理解する姿勢がますます求められることと思います。その意味においても早め早めに情報をキャッチアップし、頭の中で“PDCA”を回しつつ、「もし上記が実行された場合、自社にはどのような影響が出てくるか?」「それら想定される影響に対し、どのような対応を行う事が最適なのか?」等々、幹部育成の視点も含め、そのような議論を社内で始めていかれる事を是非、おススメする次第です。

私たちも今後、有益な情報を入手出来次第、どんどん情報を発信してまいります。


※本記事の引用元資料はこちら

第230回社会保障審議会介護給付費分科会
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_36124.html

※「介護給付費分科会」ここまでの議論の一覧ページはこちら
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-hosho_126698.html



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